大豆と蕎麦。
別々の食材だと思っていた二つが、振り返れば、高のの料理の中でずっと結ばれていました。
呉汁で蕎麦を食べる。
黒練り胡麻を合わせ、護摩蕎麦にする。
そして今、大豆油を使った「油結び」で、十割蕎麦を打つ。
大豆は汁となって蕎麦を受け止め、油となって蕎麦を結ぶ。
これは偶然ではなく、料理を続ける中で少しずつ姿を現した「大豆と蕎麦の組み合わせによる奇跡」なのだと思います。
【発酵の里・神崎から届いた在来大豆】
今回、千葉県神崎町の「お里さん」こと、神崎町発酵アンバサダーの澤田聡美さんから、「こうざき在来大豆」を送っていただきました。
袋の表示には「在来大豆【千葉県こうざき産】」、販売者は有限会社こうざき自然塾と記されています。
澤田さんから見せていただいたのは、夕日に照らされ、黄金色に染まる広大な大豆畑でした。
「一面の大豆畑を見にいらしてください」
その言葉とともに、秋には無農薬で育てられた黒大豆を収穫し、枝豆として食べられることも教えていただきました。
今から、その黒大豆の枝豆に出会える日が楽しみでなりません。
澤田さん、そして神崎町の皆様。
大切な大豆と、まだ見ぬ大豆の世界を教えてくださり、本当にありがとうございます。
【呉汁と蕎麦から始まった】
高のでは、2013年6月12日から、大豆をすり潰した「呉」を蕎麦に合わせてきました。
大豆の呉を、鰹、昆布、干し椎茸の出汁でのばし、醤油で味を整える。
大豆の素朴な甘みと出汁の旨み。
その中に、殻ごと挽いた香り高い十割蕎麦を入れます。
2014年には、そこへ黒練り胡麻を合わせた「護摩蕎麦」を発表しました。
黒胡麻の深い香り、大豆のまろやかさ、出汁の旨み、そして蕎麦の力強さ。
鉄鍋の中で、それぞれが別々に主張するのではなく、一つの料理として結ばれます。
現在の「まめつゆ蕎麦」も、この歩みの先にあります。
呉汁、護摩蕎麦、まめつゆ蕎麦。
名前や仕立ては変わっても、高のが続けてきたものは「まめと蕎麦を一つの椀に結ぶこと」でした。
【大豆と蕎麦――栄養の異なる二つを、一椀に】
大豆には、たんぱく質、脂質、炭水化物の三大栄養素に加え、食物繊維、ミネラル、ビタミンB群などが含まれています。
蕎麦粉にも、たんぱく質や食物繊維が含まれ、マグネシウム、リン、鉄、ビタミンB群など、さまざまな栄養成分があります。
蕎麦を殻に近い部分まで余さず使う高のの十割蕎麦は、白く磨き上げることよりも、蕎麦そのものを表現することを大切にしています。
大豆と蕎麦のどちらか一方を「完全な食べ物」と呼ぶのではありません。
性質の異なる二つの植物性食材を、出汁や胡麻とともに一椀でいただく。
そこに、この料理の豊かさがあります。
栄養だけを足し算するのではなく、香り、甘み、食感、温度まで含めて一つにする。
それが、高のの考える養生料理です。
【大豆油で蕎麦を打つ「油結び」】
大豆と蕎麦の関係は、食べ方だけでは終わりませんでした。
高のでは現在、大豆油と水を撹拌した乳化液を水回しに使い、十割蕎麦を打つ「油結び」に取り組んでいます。
始まりは、フランスの蕎麦粉で、小麦粉を混ぜずに十割蕎麦を作りたいという挑戦でした。
熱を使う「湯ごね」だけに頼らず、蕎麦粉の個性をできるだけ残したまま、切れにくく、すすれる十割蕎麦を作れないか。
その試行錯誤の中で、大豆油と水を結び、蕎麦粉へ回す方法にたどり着きました。
大豆の呉で蕎麦を食べてきた店が、今度は大豆の油で蕎麦を打つ。
料理としても、技法としても、大豆と蕎麦が結ばれたのです。
「理にかなう」とは、栄養上の効果を大げさに断定することではありません。
大豆を余すことなく見つめ、汁、豆、油という異なる姿を、それぞれ蕎麦に生かすこと。
長年の料理と試作が、一本の道としてつながっていることです。
【大豆の世界は、まだ見ぬ世界】
蕎麦と向き合い続けてきましたが、大豆の世界には、まだ知らない景色が広がっています。
大豆は、乾燥した豆だけではありません。
春に芽を出し、夏には青々と葉を広げ、秋には枝豆として実り、やがて畑一面が黄金色に染まります。
収穫された豆は、冬の温かな呉汁になります。
豆には、季節を一椀の中に表現する力があります。
夏の枝豆の呉汁。
秋の黒大豆の枝豆。
冬のこうざき在来大豆による温かな護摩蕎麦。
豆が変われば、香りも、甘みも、色も変わります。
その季節の豆に十割蕎麦を合わせれば、高のの一椀で日本の四季と土地を伝えることができます。
【これからの高の――一年を通して、季節の豆と蕎麦を】
これから高のは、一年を通して、その季節に出会える豆と向き合います。
季節の豆を呉汁にし、護摩蕎麦やまめつゆ蕎麦として届ける。
大豆油による「油結び」で、世界の蕎麦粉を十割蕎麦へ結ぶ。
土地ごとの豆、土地ごとの蕎麦、土地ごとの季節を、一椀の中で出会わせる。
多くの料理を増やすことが目的ではありません。
大豆と蕎麦という二つの食材を深く掘り下げ、季節が変わるたびに、新しい表情を見つけていくこと。
大豆で蕎麦を食べ、大豆の油で蕎麦を打つ。
呉汁、護摩蕎麦、まめつゆ蕎麦、そして油結び。
大豆と蕎麦は、偶然出会ったのではありません。
振り返れば、すべてが一本の道としてつながっていました。
高のはこれからも、まだ見ぬ大豆の世界へ進みます。
そして季節の豆と十割蕎麦によって、日本の土地と四季を、未来の若者へ残していきます。
亀戸養生料理 鍋蕎麦屋 高の
SOBATAKANO
【参考資料】
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」食品成分データベース
農林水産省「豆のこと、もっと知りたい。」
農林水産省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」

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