2025年2月22日。
フランス・マルセイユで開催されたJapan Expo Sudで、フランス産蕎麦粉を使った十割蕎麦打ちを披露しました。
France Japon ConnexionとSakura Bentoの皆さんが用意してくださった舞台です。
今回の蕎麦打ちには、油を使いました。
今、私が「油結び」と呼んでいる方法です。
2024年に残った宿題
2024年、マルセイユのROBATOで、フランス産蕎麦粉による十割蕎麦打ちに挑戦しました。
この時は「湯こね」です。
しかし、日本の蕎麦粉とは性質が違い、水が思うように入っていきません。生地には塊ができ、均一につなぐことの難しさを感じました。
フランスの蕎麦粉を、日本の蕎麦粉のように扱おうとしてはいけない。
素材を自分の技術に合わせるのではなく、自分の技術を素材に合わせなければならない。
2024年の経験は成功だけではありません。
大きな宿題を日本へ持ち帰った一年でした。
熱に頼らず、十割を打ちたい
日本に戻ってからも、考え続けました。
小麦粉を加えず、蕎麦粉だけで打つ。
できるだけ熱にも頼らず、冷たい水で生地を結びたい。
そして、フランス産蕎麦粉が持っている香りや力を、そのまま一杯の蕎麦にしたい。
時間と失敗の連続でした。
水の量、入れ方、混ぜ方、粉の粗さ。
試して、失敗して、もう一度考える。
その中でたどり着いたのが、水と油を十分に撹拌した液体を、水回しに用いる方法です。
油を加えて味をごまかすためではありません。
粉を無理に変えるためでもありません。
フランス産蕎麦粉の個性を削らず、蕎麦粉100%の生地として結ぶための工夫です。
素材を活かす。削らない。十割で打つ。
それが、私の目指した蕎麦でした。
2025年、Japan Expo Sudで披露
2025年2月22日、Japan Expo Sudの会場で、油を用いた十割蕎麦打ちを披露しました。
フランス産蕎麦粉に水と油を合わせ、粉の状態を見ながら丁寧に水を回していく。
粉が少しずつ変化し、一つの生地になっていく。
フランスの蕎麦粉が、私の手の中で思い通りの十割蕎麦になった瞬間でした。
2023年から三年続けて、この会場で十割蕎麦を打たせていただきました。
一度だけの挑戦ではありません。
毎年、同じ場所へ戻り、前年の経験を次の技術へつなげる。
2024年に残った宿題に、2025年の実演で一つの答えを出すことができました。
技術が先にあり、名前は後から生まれた
この実演をした時、まだ「油結び」という名前を前面には出していませんでした。
先にあったのは、目の前の粉を何とか生かしたいという思いと、実際の蕎麦打ちです。
名前は後から生まれました。
油結びとは、
「油と水を十分に撹拌した液体を蕎麦打ちの水回しに用い、蕎麦粉100%の生地を結ぶ方法」
です。
公開情報を調べた範囲では、同じ名称と方法で十割蕎麦を打つ別の実践者は確認できませんでした。
ただし、大切なのは「誰が最初か」を争うことではありません。
技術を生み、記録として残し、次の人へ伝えることです。
フランスのシェフへ、新しい素材を
私が目指しているのは、日本の蕎麦をそのままフランスへ持ち込むことだけではありません。
フランス産蕎麦粉を、フランスの料理人が使える新しい素材として届けたい。
蕎麦は、つゆだけで食べるものではありません。
フランス料理のソースにも、野菜にも、肉や魚にも合わせられる可能性があります。
蕎麦は僕が打つ。
その先の料理は、フランスの料理人へ。
パン屋さん、レストランのシェフ、料理学校で学ぶ若い人たち。
それぞれの感性で、フランス産蕎麦粉の新しい料理を生み出してほしいと思っています。
レストランの原点
「レストラン」という言葉は、フランス語の「restaurer(回復させる・元気を取り戻させる)」につながる言葉です。
人の身体と心を、料理によって回復させる場所。
それは、私が亀戸で掲げている「養生料理」と重なります。
料理は、華やかさだけではありません。
食べた人が元気になり、明日を生きる力を取り戻す。
そこに、レストランの原点があると私は考えています。
フランスの蕎麦粉に、新しい姿を。
フランスの料理人に、新しい素材を。
そして未来の料理人へ、レストランの原点を。
9月22日、もう一度
2026年9月22日、フランス産蕎麦粉を使った油結びによる十割蕎麦打ちを、Instagramライブで実演します。
日本時間は朝7時、フランス時間は午前0時です。
約30分、編集なし。
水回しから、まとめ、延し、切り、茹で上げまでお見せします。
今回打った蕎麦は、日頃のお客様への感謝を込めて「ひとくちプレゼント」としてお出しする予定です。
2024年に生まれた疑問。
2025年、フランスで披露した技術。
そして、これから未来の料理人へ残していく油結び。
日本料理人として、技術を生み、残し、伝える。
世界と日本をつなぐ料理人として、これからも蕎麦を打ち続けます。
この場所をつくってくださったジュリアさん、France Japon Connexion、Sakura Bentoの皆さん、そしてフランスで出会ったすべての方々に、心より感謝申し上げます。
次回へ続きます。
レストランの原点——養生料理 SOBA TAKANO。
Aux origines du restaurant — YŌJŌ RYŌRI, SOBA TAKANO.









